うさぎやデグーと同じように草食動物ですので、不正咬合などの歯の病気が起ります。また、幼少時には寄生虫疾患や皮膚糸状菌症(水虫)も多いので注意が必要です。非常に痩せているにも関わらず、外見上はその被毛の厚さによってその異常に気づかないことが多いので気をつけましょう。背骨や骨盤がゴツゴツ触れるようなら、病気の種類によらず危険信号です。痩せている場合は症状が他になくても動物病院へ行きましょう。
チンチラを連れて来院される場合は、待合室内で体温が上がり熱中症を起こすことがあります。午後の日差しが入る時間にご来院の際は特にお気をつけください。受付までご要望いただければ、空調の調節などいたします。
▶ 熱中症
チンチラは冷涼で乾燥した場所に住んでいた動物であり、暑さに非常に弱い動物です。夏に限らず気温・湿度の上昇する季節は注意しなければなりません。犬の場合は暑い時に舌を出して呼吸をする(パンティング)ので、まだわかりやすいですが、チンチラの場合は外見上、そういった分かりやすい兆候なく、突然倒れます。予後が非常に悪く、死に至るおそれがあります。直射日光をさける、肥満にならないよう日頃から気をつけるなど、予防が大切です。
▶ 皮膚糸状菌症
特に幼少期に多い皮膚の感染症です。俗に水虫と言われますが、皮膚糸状菌というカビの一種が感染して起こります。耳や足の先など皮膚のどこにでも起こります。体表に痂皮(カサブタ)がついて、その下の皮膚が腫れて赤くなっているときは注意が必要です。大抵は痂皮を砕いて顕微鏡で観察すると、糸状菌の胞子が観察されることで診断できます。治療には内服・外用を組み合わせます。再発が多く、一度治ったと思っても、全身を時折チェックする必要が有ります。
▶ 下痢
通常はコロコロとした硬いウンチが出るのが普通ですが、指で簡単に潰れるほどの柔らかいウンチや下痢を起こしているチンチラは注意が必要です。栄養不良や脱水、低血糖などを起こします。ひどい腸炎のためにしぶりがひどくなると脱腸を起こすこともあります。
原因としては、ジアルジア、条虫などの寄生虫の感染が挙げられます。早期発見により治療が可能ですが、体重が減ってきている場合は手遅れになることもあります。ウサギやハムスターに比べ、急激な体調悪化が多いので注意が必要です。
▶ 不正咬合
ウサギやデグーと同じように、チンチラには前歯と奥歯があり、一生を通してずっと伸び続けます。正常な噛み合わせを維持するためには、牧草などにより歯を長時間こすり合わせること、カルシウムとリンの摂取量が適正であることが必要です。偏食をするチンチラは特に注意が必要です。甘いものなどのおやつは最小限にして、良質なペレットフードと牧草を主体とした食事を中心にします。
もしも不正咬合が起こってしまった場合は、歯を削って長さを整えることができます。よだれを垂らして歯ぎしりをしたり、食欲が落ちてきている場合は早めに動物病院にご相談ください。
前歯(切歯)の異常だけであれば、身体検査でわかることが多いですが、奥歯は口の中の奥まったところにあるので、なかなか見ることができません。その場合は、レントゲン検査を行います。ただ、レントゲンを撮るのも嫌がる場合は全身麻酔が必要になります。
全身麻酔をかける場合は、レントゲン撮影はもちろん、直接奥歯を観察することができます。また、必要があればそのまま歯を削って整えたりします。麻酔にはイソフルレンというガスを使いますが、その子の呼吸の深さや心拍、粘膜の色などを見ながら最小限度に濃度を調整しながら行います。
▶ 膿瘍
草食動物は不正咬合が元で、膿瘍を形成することがあります。奥歯の根元が顎の骨から逸脱したり、歯根周辺に感染が起きることが原因です。特に食事内容の偏りがあり、炭水化物の摂取が多い場合に注意が必要です。穀類を原料とした食事には、リンの摂取がカルシウムに比べ過剰になり、骨の代謝が顎の骨がもろくなると言われています。
下顎の一部や目の周りに、白っぽい膿をためたしこりができます。発症すると食欲が低下して痩せてしまいます。
治療では、皮膚を切開して排膿することで、しばらく食欲が改善することもありますが、原因となっている歯を除去したり、膿瘍の袋を摘出したりまでしないと根治できないことが多いです。ただし、その処置自体が負担になって食欲不振を悪化させることもあるので、状態を見極めながら一番メリットの大きい方法を選択します。