歯や皮膚に関する病気のほか、病気に応じて可能な限り対応しています。特殊な検査が必要なケースでは、ご希望に応じて専門病院をご紹介いたします。
デグーはウサギなどの草食動物と同様に不正咬合によるトラブルが比較的多い動物です。日頃から牧草をしっかり食べ、穀物の過給によるリンの摂りすぎなどに気をつけることで、ある程度予防は可能ですが、飼育下のデグーではどうしても、ある程度の不正咬合は起こりやすいと感じています。軽い不正咬合は特に症状がありませんが、重度になると痛みが生じたり、摂食障害をきたします。
歯並びが悪くなると、ご飯を食べることができません。自分から「噛み合わせがおかしい・・」とは言ってくれないので、体重の変化や、筋肉のつき具合から、栄養状態を把握してあげます。ごはんを残すのが明らかな場合も注意です。
治療も前歯を削る場合と、奥歯(臼歯)を削る場合と分かれます。また、麻酔をかけずニッパーで切断する場合や、全身麻酔下で電動器具を使って精密に削る場合とがあります。
デグーの病気は、外見上から視認できるもの(切歯の異常や皮膚病)もありますが、身体検査上明らかにできない原因は、他の検査を利用する必要があります。
不正咬合に代表される歯の異常、特に臼歯の異常所見は視診や触診ではあまり確認することができません。また、覚醒時の興奮状態のなかで、むりやり口をこじ開けたり、押さえつけて検査をすることは、怪我や病気の悪化につながってしまいます。
精査が必要なデグーにおいては、そのため、全身麻酔下でのレントゲン撮影や口腔内検査を実施することがあります。常生歯をもち、常に歯が伸び続ける草食動物は、一度歯の問題が悪化すると、歯が伸長するにつれて症状が悪化する傾向があります。そのような場合は早めの検査と治療が必要となります。
当院で飼育しているデグーのグッチ君は、生まれつき上顎が短く、曲がっており、切歯の咬合面がまっすぐに合わないため、磨耗による短縮が起こらず、一部が伸びすぎてしまいます。切歯がうまく咬合しないと、ペレットを齧って細かくしたり、奥歯での正常な咀嚼をすることが困難になるため、食欲が落ちてきます。以下において、全身麻酔下の切歯の処置について解説します。
吸入麻酔で眠っているグッチを横に寝かせています。深く眠っているので、処置に伴うストレスはほとんど感じていません。下顎の前歯(切歯)のうち、一本だけ伸びすぎています。上下とも、全体的に切歯が過長となっています。
高速回転するダイヤモンドディスクで、伸びすぎている前歯を慎重に切断します。口の中を切らないように、割り箸でガードしています。
上の歯も同じように切断します。
上下の歯がきれいに揃いました。処置は2〜3分程度で終了し、麻酔を切れば約5分ほどで目が覚めます。1時間ほど経つとご飯も食べ始めます。
処置の間隔は不正咬合の種類によりますが、当院のグッチ君は約1ヶ月に1度は行っています。