犬猫についで飼育頭数の多い動物です。下痢や皮膚病などが多く認められます。ハムスターはその品種によって病気の種類に差があることも重要です。特に幼少時の下痢症では、種間においてはっきりとした差が見られます。ハムスターの健康管理で重要なのは体重測定です。キッチンスケールなどで定期的に体重をチェックすることで病気の早期発見ができます。
よくあるハムスターの病気 |
▶ 外傷
ハムスター同士で喧嘩したり、ケージの網に引っ掛けたりして、ハムスターは怪我をしてしまうことがあります。なかには骨折をしていたり、傷が膿んでしまうケースも。とくにハムスターの咬傷は、傷が小さく見えても、皮下で膿の塊をつくってしまうことがあります。人から見ればほんの小さな傷だとしても、ハムスターの体の大きさから考えると、かなり大きな外傷になります。思っても、洗浄・消毒とお薬の内服が必要となります。
▶ 下痢(寄生虫、細菌性下痢)
ハムスターの下痢の原因は、条虫、蟯虫、トリコモナス、ジアルジア、ローソニア感染症(ウェットテイル)など様々です。ハムスターの種類によって原因が異なります。複数の寄生虫に混合感染していることも珍しくありません。
若いハムスターの場合は、下痢が続くと、脱水と栄養吸収阻害のため、体力がなくなっていきます。とくに、飼い主様が来院される際、目が開かないことを主訴にされる場合がありますが、多くは脱水による二次的な症状です。ハムスターが脱水すると、背中の皮下組織が水分を失って硬くなってきます(モチモチ感がなくなる)。また、栄養状態の悪いハムスターは筋肉が衰え、背骨や骨盤がゴツゴツと触れるようになります。命に関わることがあります。
便の検査をして、治療方法を決定します。一度治療がうまくいくと、再発しない感染症もありますが、中にはお薬でいくら治療をしても完治しないものもあります。ただ、そんなケースでも、お薬で寄生虫の量を極力減らして健康を維持することができる場合が多いです。また、食事内容を変えたりすることで下痢が治まることもあります。
▶︎ マイボーム腺腫
まぶたが腫れて、目が開けずらくなることがあります。細菌感染や脂肪分泌の過多などのため、涙の成分をつくるマイボーム腺の出口が詰まることが原因と考えられます。
まずお薬で様子を見ますが、効果のない場合は、麻酔下で溜まった膿や脂肪を除去します。
この病気にかかるハムスターは比較的太り過ぎの場合が多いです。脂肪分の多い食事を制限することで予防できる可能性があります。
▶ 皮膚のトラブル(真菌症、寄生虫、床材過敏症)
犬猫と同様の原因で皮膚の感染症がよく起こります。とくに幼少時のハムスターはまだ免疫が未熟なため注意が必要です。原因としては皮膚糸状菌(水虫)、ダニ、毛包虫(アカラス)、栄養障害による脱毛症などが見られます。皮膚の検査で原因を特定して治療します。
全身性に症状が出ていることが多いため、食欲がなくなり、体重が減ったり、脱水することが多くあります。これらの皮膚病は、重症化すると命を落とすこともありますので注意が必要ですので、やはり全身の観察とともに体重測定が重要になります(皮膚が良くなると体重が増えます)。
ハムスターは床材の選択も重要です。広葉樹、針葉樹、紙製といろいろな床材がありますが、なかには過敏反応を起こして皮膚炎とかゆみが生じるケースがあります。一般的には針葉樹を使った床材は避けるべきと言われています。床材の変更後に、皮膚の状態が悪くなった場合は注意しましょう。ß
▶ 頬袋の脱出
頬袋の粘膜の傷が化膿すると、それがしこりになって口の外に飛び出すことがあります。また、口の中の腫瘍が飛び出していることもあります。頬袋の粘膜の損傷が軽度であれば、そっと口の中に戻して、抗菌剤の内服で様子を見ることもあります。戻してもすぐ出てしまったり、腫れやしこりが大きい場合は、内科的な治療だとうまくいきません。その場合は全身麻酔下でしこりを切除します。
予防のために、鋭利で硬い食物(潰した乾燥とうもろこしなど)は避けるか、小さく割る。または1日で食べきる量をあげて、頬袋にあまり詰め込まないようにすると良いでしょう。
▶ 腫瘍
高齢のハムスターは腫瘍(ガン)になることがあります。手術で摘出するか、緩和療法で痛みや苦しみを取り除く治療を行います。早期発見のため、レントゲン検査や超音波検査を使用することができます。抗がん剤治療は残念ながら情報が少ないため当院では現在実施しておりません。
手術の実施によって必ずしも寿命が伸びたり、本人の苦しみが減るとは限らないため、腫瘍の手術は安易におすすめしませんが、以下のようなケースでは実施を考慮します。
①ごく初期の小さな腫瘍。
②出血が激しく、貧血による死亡の恐れ
③違和感やかゆみから、自分でしこりを咬んでしまう。
その他 Other services |
▶ 爪切り
伸びすぎると目を傷つけたり、引っ掛けて爪を折ったりすることがあります。抱っこされてもあまり嫌がらないハムさんであれば爪切り可能です。暴れてしまうハムさんは、どうしても爪切りしなければならない時のみ、麻酔下で行います。