ペットサロンで麻酔をかけずにわんちゃんの歯石を取るサービスがテレビで紹介されていました。
この無麻酔下歯石除去ですが、実はその危険性が指摘されていて、日本小動物歯科研究会の公式声明も発表されています。
歯痛だけでなく、顎の骨が折れたり、全身に菌をまき散らす原因となる歯周病。その治療に麻酔が必要な8つの理由を解説します。
①歯石除去のゴールは、歯の表面をツルツルにして歯石がつきにくくすることです。しかし、動く動物の歯をガリガリと削ると、細かい凸凹が残って、歯石がつきやすくなります。健康な歯のエナメル質を傷つけることもあります。
②歯科器具は先の尖ったものが多く、力加減には繊細な技術が必要です。患者さんが動くと、歯、歯茎、唾液腺や血管が傷つきます。
③歯周病の治療の本丸は、外から見えないポケットの部分です。ポケットの底まで器具を入れて処置をしなければ歯周病は放っておかれたのと同じです。無麻酔ではこの部分の歯石は取れません。
④歯周病がひどくなりやすいのは器具の届きにくい奥歯です。どれだけ我慢強い犬でも、麻酔なしでは奥歯や内側の処置ができません。
⑤歯石はばい菌の塊です。犬が処置中にむせて、取った歯石が気道に入ると肺炎を起こします。麻酔をかけるときは、気管チューブや吸引器を使って気管を守ります。
⑥歯周病にかかった歯の周りの骨(歯槽骨)はもろくなっています。動く動物を処置しようと、引っ張ったり抑えたりするだけで顎の骨が折れることがあります。
⑦正しい歯石取りは痛いです。悪くなった歯を抜かなければならないこともよくあります。痛い思いをすること自体かわいそうですし、家に帰った後に歯みがきをも嫌がるようになります。
⑧麻酔が怖いという声を耳にしますが、麻酔の安全性は年々高まっています。また、術前検査で安全性を確認したり、持病をフォローしたりします。麻酔はお年寄りだから無理ということはありません。
つまり、無麻酔ではペットに怖い思いをさせた上に歯周病を悪化させかねません。麻酔をしないから安全、というのは間違いなのです。
自分が犬だったら『寝ている間にすっかりよくしてほしい!』と思うだろうなあ、と想像しながら歯周病の治療を行っているのですが、いかがでしょうか?
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まさお (金曜日, 10 3月 2017 22:35)
私を含めて無麻酔の歯石取りについて間違って認識していた
飼い主はたくさんいたと思います。大変勉強になりました。
本当にありがとうございました。
やすだ動物病院 (土曜日, 11 3月 2017 09:51)
ブログを読んで下さってうれしく思います。
まさお様のおっしゃるように、無麻酔を望まれる方は多いですし、麻酔は嫌だからと治療を諦めていた方もいらっしゃいます。獣医師としては、歯科治療・麻酔技術の向上と合わせて、ご家族への説明にも力を入れなければと感じます。
コメント、ありがとうございました!
サヤンママ (水曜日, 26 6月 2019 16:31)
無麻酔、病院にすすめられました。麻酔を何度もしているからです。でも、怖いので麻酔をしてもらいます。
やすだ動物病院 (木曜日, 27 6月 2019 18:23)
コメントをありがとうございます。
ご心配はごもっともです。
麻酔の安全管理は歯周病治療を行う上で最も重要なことですが、回数を重ねることで負担が重くなるという訳ではありませんのでご安心ください。
歯周をきちんとケアして、健康寿命を伸ばしてもらえたらと思います。
Melママ (木曜日, 29 8月 2019 16:08)
実は10歳のMダックスのスケーリングを、8月27日に麻酔をして、歯を綺麗にしてもらったのですが、施術後迎えに行くと凄い声が枯らしてまで鳴いていたので、置いてかれまいと必死で鳴いてるんだと思っていたんです。元々オーバーに鳴くタイプの子なので。
今日で2日が経ちますが普段からよく鳴く子が鳴かない。
声がかすれて出ないんです…
昨日は院長先生がお休みで代理の先生に、症状を話したらスケーリング時にチューブを入れてるから、喉を痛めたのかも?
との返答でした。
日にち薬で様子見てたら、治るもんですかね…喉が乾燥状態が続き、喉風邪みたいや状態なんでしょうかね?
今日は休診日で、気になったもので勝手ながらこちらに書き込み致しました。
スコット (水曜日, 09 10月 2019 13:41)
こちらのブログ読んでよかったです!
麻酔なしでの危険性があるなんて知りませんでした。
ありがとうございました。
やすだ動物病院 (土曜日, 12 10月 2019 13:01)
コメントをありがとうございました。
歯科治療や麻酔管理の技術は年々進歩しています。ペットの健康寿命とQOLのため、より安全確実な歯周病の治療法が普及するよう、私たち獣医師も努力してまいりたいと思います。
通りすがりの飼い主 (木曜日, 30 1月 2020 11:14)
2歳になるNFTの飼い主です。
歯石の麻酔下・無麻酔下除去のメリットデメリットを調べて行くうちに
たどり着きました。リンク先の公式声明含めてもっと飼い主さんに
広く読んでもらいたいものですね。
「寝ている間にすっかり良くしてほしい!」←これにつきますね♪
やすだ動物病院 (金曜日, 31 1月 2020 18:13)
コメントありがとうございます。
今も多くの方がこの記事を読んで下さっていることに驚き、嬉しく思っています。
それだけ皆様の関心が高いことを改めて感じました。
今後も情報発信を続けてまいります。
しし (日曜日, 08 3月 2020 20:10)
声をあげれない犬たちのために
飼い主の無知な善意から無麻酔で歯石を取り、本丸の歯周ポケットを放置することなく、病院を慎重に選んでいただき、麻酔をして歯石と歯周ポケットをきれいにする声明をぜひお願いします!私も勉強になりました。
本当にありがとうございました。
イナッチ (月曜日, 13 4月 2020 21:05)
11歳を迎える三毛ちゃん痛くてろくに食べれません。今日で丸2日なめる程度。3日後の木曜日に除去のため全身麻酔は大丈夫ですか?点滴は必要でしょうか?食べれなくなって痩せましたし、アドバイス頂ければ嬉しいです。
やすだ動物病院 (火曜日, 14 4月 2020 11:35)
>イナッチ様
それはご心配ですね。
麻酔をして大丈夫かどうかは、診察してからの判断となりますので、残念ながら個別のご相談にはお答えしかねます。
一般的に、体力が落ちると麻酔のリスクも上がりますので、食べない原因をはっきりさせ、今からできる処置を始めるのが望ましいと思います。
できるだけ早く、かかりつけの先生の診察を受けていただくことをお勧めします。